社内のAI利用ルール(ガイドライン)の作り方|工務店が最初に決めること

お役立ちコラム:社内のAI利用ルール(ガイドライン)の作り方|工務店が最初に決めること

この記事の結論

  • AI利用ルールは禁止事項からではなく、情報の置き場所と見られる範囲から決める。
  • AIのアカウントは会社で契約し、社員一人ひとりに作る。共有アカウントは避ける。
  • 入れてよい情報と任せてよい作業を線引きし、迷ったときの相談先を決めておく。
目次

01ルールが無いまま、使い始めていませんか

社員が仕事でAIを使い始めた。便利そうだが、お客様の情報を入れていないか、誰がどのAIをどう使っているのか、社長は把握できていない。そんな状態の工務店は少なくありません。

研究会でも、会社が標準のAIを用意しないと、社員が個人の無料アカウントに業務の情報を入れてしまう危険があると指摘されてきました。登壇した社長の会社のパネル討論では、会社のアカウントをもっと早く配ればよかった、という反省も出ています。

一方で、ルールを厳しくしすぎると、誰も使わなくなります。利用ルール(ガイドライン)は、社員を縛るためではなく、安心して使ってもらうためのものです。この記事では、工務店が最初に決めておきたいことを順番に整理します。

ポイント

ガイドラインは「禁止事項の一覧」から作るのではなく、「会社の情報をどこに置き、誰が何を見られるか」を決めるところから始めます。

02AI利用ルールは、何から決めればよいか

支援の現場では、AIの利用ルールを、次の順番の5番目に置いています。

  1. 会社の情報を置く場所を決める
  2. フォルダの分け方と名前の付け方を決める
  3. 誰にどのフォルダを見せる・見せないかを決める
  4. 誰にどのAIを使わせるかを決める
  5. 利用ルールを決める
  6. 社内に広げる文化をつくる(事例共有や評価)

利用ルールだけを先に作っても、情報の置き場所や見られる範囲が決まっていなければ、守りようがありません。給与や人事、経営の情報が誰でも見られる場所にあれば、AIを通して見えてしまうこともあります。

03AIのアカウントは、会社と個人のどちらで持つか

最初に決めたいのは、AIのアカウントの持ち方です。

おすすめしているのは、会社として契約し、社員一人ひとりにアカウントを作る形です。個人向けのプランを社員が個別に使っていると、作ったものや情報が個人のアカウントにたまり、その社員が辞めたときに会社に残りません。法人・チーム向けのプランなら、誰がどれくらい使っているかも見えます。

一つのアカウントを全員で共有する方法は、誰が何をしたか、何を消したかが分からなくなるため、おすすめしません。

注意

会社が管理するアカウントでは、社員の入力内容が管理する側から見える場合があります。仕事以外の私的な相談を入れないことも、ルールに書いておきましょう。

04AIに入れてよい情報・いけない情報は、どう決めるか

次に、AIに入れてよい情報の範囲を決めます。工務店で特に気を付けたいのは、次のような情報です。

  • お客様の個人情報(氏名・住所・家族構成・資金の話)
  • 図面や見積書などの、お客様ごとの資料
  • 社員の評価や給与などの人事情報
  • 会社の経営の数字

これらを「一切入れない」とすると、AIの使い道が大きく狭まります。会社が管理するアカウントで、決められた場所の情報だけを扱う、といった線引きが現実的です。

AIに会社のメールやファイルをつなぐ使い方では、範囲の指定も大切です。研究会の準備で試した際、AIに会社のファイルを探させたところ、共有を受けていた他社のフォルダまで候補に出てきたことがありました。AIに見せるフォルダを、自社のものに限って指定しておく必要があります。

05AIに任せてよい作業と、人が決める作業はどう分けるか

AIに任せる作業の範囲も決めておきます。

  • 下書き・要約・チェックはAIに任せてよい
  • お客様に出す書類と金額は、人が最終確認する
  • 送信や削除など、取り消しにくい操作はAIに自動でさせない
  • メールや資料の中に書かれた「指示らしき文章」を、AIにそのまま実行させない

研究会で登壇した社長も、最後に判断して責任を取るのは人だ、と強調していました。

また、自動で作業を進められる強力なAIの道具は、全員に一度に配らないのが安全です。LIFEFUNDでは、対話型のAIは全員に配り、社内の事例共有会で使い方を確かめた社員から順に、より強力な道具を渡しています。

06ルールは、書いたあと誰が伝えるか

ガイドラインは、書いて配っただけでは読まれません。現場で「これは入れていいのか」と迷ったときに聞ける相手が必要です。LIFEFUNDの支援では、社内にAIの推進担当を一人置いていただくことを前提にしており、ルールの問い合わせ先もこの担当にしておくと運用が回りやすくなります。

また、会社の規模によっては、最初から細かいルールを作り込まない判断もあります。社員の少ない会社で、複雑なガイドラインづくりは当面見送り、フォルダの名前の付け方を決めることと、個人のチャットから会社の連絡ツールに切り替えることを先に進めた例もあります。

チェック
  • 会社の情報を置く場所と、見られる範囲を決めたか
  • AIのアカウントを会社で契約し、一人ひとりに作っているか
  • 入れてよい情報・いけない情報の線引きを書いたか
  • お客様に出すものを、誰が最終確認するか決めたか
  • 強力なAIの道具を渡す順番を決めたか
  • ルールを現場に伝える担当者を決めたか

07AI利用ガイドラインには、何を書けばよいか

ここまでの内容を、ガイドラインの目次の形にまとめると、たとえば次のようになります。最初から全部を埋める必要はありません。会社の規模や使い方に合わせて、必要な項目から書き始めてください。

  1. 目的:なぜ会社としてAIを使うのか(社長の言葉で一、二行)
  2. 使ってよいAIとアカウント:会社で契約したAIと、アカウントの持ち方
  3. 情報の置き場所:AIに読ませてよいフォルダと、読ませないフォルダ
  4. 入れてよい情報・いけない情報:お客様の情報、図面・見積、人事、経営の数字の扱い
  5. 任せてよい作業・人が確認する作業:下書き・要約・チェックと、最終確認・送信・削除の線引き
  6. 作ったものの保存場所:AIで作った書類や画像を、どこに残すか
  7. 困ったときの相談先:社内の推進担当の名前
  8. 見直しの時期:いつ、誰が見直すか

国のAI事業者ガイドラインも、AIを使う事業者の留意点をまとめています。項目を決めるときの参考にしてください。

08よくある質問

Q社員の少ない会社でも、ガイドラインは必要ですか?

A細かい文書は、最初は無くても構いません。ただ、アカウントを会社で持つこと、情報を置く場所を決めることだけは、人数にかかわらず先に決めておくことをおすすめします。後から人が増えたときに、決めておいた土台がそのまま生きます。

Q一度作れば、それで終わりですか?

AAIは、主役の道具や機能が入れ替わる速さが特徴です。新しい道具を入れたとき、AIにつなぐ範囲を広げたときなどに、見直す時期をあらかじめ決めておきましょう。見直しのときには、現場で困ったことや、ルールが守りにくかった所を推進担当が集めておくと、実態に合ったルールに育っていきます。

Qルールを作ると、社員がAIを使わなくなりませんか?

A禁止事項ばかりを並べると、その心配があります。だからこそ、「ここまでは自由に使ってよい」という範囲を先に示すことが大切です。会社のアカウントで、決められたフォルダの情報を使い、下書きやチェックに使う分には遠慮なく使ってよい、と書いておけば、社員は安心して試せます。

09参考にした資料

(2026年10月29日時点で確認)

まとめ

社内のAI利用ルールは、禁止事項から作るのではなく、情報の置き場所と見られる範囲、アカウントの持ち方を決めるところから始めます。そのうえで、入れてよい情報、任せてよい作業を線引きし、迷ったときの相談先を決めておく。会社の規模に合わせて、最初は必要な分だけで構いません。LIFEFUNDのAI組織浸透支援では、こうしたルールづくりと、社員がAIを使い続けるための仕組みづくりを一緒に進めています。

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この記事を書いた人

建築AI経営研究会の編集部です。静岡県浜松市の工務店・株式会社LIFEFUND(注文住宅「ARRCH」「PG HOUSE」)が運営し、自社でAIを経営に入れてきた実務をもとに、工務店・建築会社の経営者向けの記事を書いています。

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