工務店のAI活用事例まとめ|営業・設計・積算・工務・社内浸透の業務別に

お役立ちコラム:工務店のAI活用事例まとめ|営業・設計・積算・工務・社内浸透の業務別に

この記事の結論

  • 工務店のAI活用は、営業・設計・積算・工務・社内浸透で入り口が違う。
  • 共通点は、会社の記録をAIに読ませ、任せる部分と人の判断を分けていること。
  • 多くの事例で、最初の一歩は社長自身が踏み出していた。
目次

01工務店はAIを、どの業務で使っているのか

AIの話を聞くと、まず気になるのは、同じ規模の工務店が実際にどの業務で使っているのか、ではないでしょうか。大手のIT企業の事例を聞いても、自社に置き換えるのは簡単ではありません。

建築AI経営研究会では、毎回、工務店の社長に自社の取り組みを話してもらっています。登壇するのは、もともとAIに詳しかった人ばかりではありません。かつては資料ひとつ作れなかったと話す社長もいます。

この記事では、研究会の講演で紹介された取り組みを、営業・設計・積算・工務(施工管理)・社内浸透の五つの業務に分けて整理します。会社名は伏せ、取り組みの中身に絞ってお伝えします。

ポイント

事例を見るときは「何を作ったか」より「どの困りごとから始めたか」に注目すると、自社に置き換えやすくなります。

五つの業務で紹介された主な取り組みを、先に一覧にしておきます。

業務研究会で紹介された主な取り組み
営業議事録・日報・見積書・帳票の入力などの付帯業務をAIに任せる。お客様のアンケートから、会う前に提案書を作る
設計外壁の色のシミュレーションや提案動画で、お客様への見せ方を変える(図面をAIに描かせる段階はこれから)
積算図面から数量を拾い出し、見積の自動作成に取り組む。平面図・立面図から窓の寸法を読み取り、単価表と照らす
工務過去の案件データを横断し、計画した利益と実績のずれを見つける。案件ごとの利益を確かめる画面を作る
社内浸透社員の困りごとを聞いて業務の流れを見直し、「AIを使わざるを得ない仕組み」をつくる

02営業では、AIを何に使っているか

営業の講演で共通していたのは、AIを「お客様と話す時間を増やすため」に使うという考え方です。

主催者の講演では、営業×AIで追う指標として二つが示されました。一つは、営業担当がお客様と向き合う時間の割合です。議事録・日報・見積書・帳票の入力といった付帯業務をAIに任せ、商談の数と追客の質を上げます。もう一つは成約率です。過去の商談の記録をAIに読ませ、トップ営業の判断の仕方を新人に引き継ぎます。

登壇した工務店の社長は、営業の属人化、提案書や見積書づくりの手間、見込み客の管理がばらばらなこと、の三つを課題に挙げていました。集客・商談・受注・育成の各段階を、勘や感触からデータに置き換えていく進め方です。お客様のアンケートの情報をもとに、会う前に一人ひとりに合わせた提案書をAIが作る、という取り組みも紹介されました。

03設計:お客様への見せ方から

設計まわりで紹介されたのは、お客様への見せ方を変える取り組みです。外壁の色をAIでシミュレーションしてお客様に見せる例や、提案のための動画をAIで作る例がありました。

一方で、図面そのものをAIに描かせる段階はこれからです。研究会では、AIがCADを操作して図面を描く段階に入りつつあることが主催者のデモで示されましたが、実務の主役になるのはまだ先の話です。

04積算には、AIがどう使われているか

積算は、研究会の参加者から「扱ってほしい」という声が多い分野です。

登壇した社長の会社では、図面からの数量の拾い出しと見積の自動作成に取り組んでいました。研究会のワークショップでも、参加者が自分のパソコンでClaudeを操作し、平面図と立面図から窓の寸法を読み取らせ、単価表と照らし合わせて見積額を出す課題に取り組みました。

運営するLIFEFUNDからは、打ち合わせの録音から数量の拾い出し、原価の集約、見積、発注予算まで、見積業務の各工程にAIをつなぐ考え方を紹介しました。

05工務:データを横断すると、案件ごとでは見えないずれが見える

工務(施工管理)の講演で印象的だったのは、すでにあるデータをつなぐだけで、経営の判断材料になったという話です。

登壇した社長の会社では、過去の案件データをAIで横断して分析したところ、計画した利益と実績がずれる案件が少なくないことが分かりました。原因は、承認を通らない発注の積み重ねと、案件ごとにばらばらな発注の経路でした。案件を一つずつ見ていては気づかず、全社を横断して初めて見えた傾向だといいます。その後、案件ごとの利益をすぐ確かめられる画面を作りました。データは「あっても、つながっていない」ことが多い、という指摘です。

主催者の講演では、工務の仕事を工程の順に細かく分け、AIに任せる仕事と人が判断する仕事を切り分けた事例も紹介しました。

06社内浸透:「使わせる」より「使わざるを得ない仕組み」

最後は、AIを社長や一部の社員だけで終わらせない取り組みです。

ある社長は、自身もかつては資料ひとつ作れなかったものの、急ぎの提案書をAIで仕上げた体験から社内の見方が変わったと話しました。社員一人ひとりに困りごとを聞くところから始め、業務の流れを見直す。指示はふだん使っているLINEから出し、成果物や進み具合は一つの画面に集める。判断の基準は「楽かどうか」。キーワードは「AIを使わざるを得ない仕組み」でした。

別の社長は、前回の研究会をきっかけに自分でClaude Codeを使い始め、提案動画、SNSの運用、採用ページ、業務管理のアプリなどを次々に形にしました。「社長が自分でやると、会社の空気が変わる」という言葉が印象に残ります。同時に、長年社内に情報をためてきたからこそ形にしやすかった、蓄積のない会社では成果が出にくい、最後に判断して責任を取るのは人だ、とも語っていました。

07事例を自社に置き換えるには、どこを見ればよいか

一つ目は、始めた業務です。研究会の事前アンケートでは、見積、図面の面積、SNSや広告、提案書、現地調査の報告、マニュアル、議事録、お客様対応などを効率化したいという声が多く挙がりました。自社で毎週発生している業務と重なる事例から見ていくと、置き換えやすくなります。

二つ目は、それまでにためてきたものです。同じ道具を使っても、会社の中にAIに読ませる記録があるかどうかで結果は変わります。

三つ目は、最初の一歩の大きさです。登壇した社長の一人は、導入は登山と同じで、いきなり完全な自動化を目指すと失敗する、まずは無料の道具で個人の業務を軽くするところから、と助言していました。

チェック
  • 自社の困りごとは、五つの業務のどこにいちばん多いか
  • その業務の記録(録音・帳票・見積書)は、AIが読める場所にあるか
  • 「AIに任せる部分」と「人が判断する部分」を分けて書き出せるか
  • 社長自身が、どれか一つの業務でAIを使ってみたか

08よくある質問

Q研究会には、どんな社長が参加していますか?

A全国から、工務店や建築会社の経営者が集まっています。AIをすでに日常的に使っている社長もいれば、これから始める社長もいます。そのため、第6回からはワークショップを初級と上級に分け、初級は作業をAIに任せる体験、上級は社長の確認作業をAIで軽くする仕組みづくり、と内容を変えています。

Q事例を聞いたあと、何をすればよいですか?

A研究会の参加者が持ち帰ったこととして多いのは、自分の会社がいまどの段階にいて、次の一歩が何かの確認です。他社の事例をそのまままねるより、「自社なら、どの業務の、どの記録から始めるか」を一つ決めて帰ることをおすすめしています。

Q社長一人で参加しても意味がありますか?

A研究会は経営者が集まる場です。紹介した事例の多くも、社長が自分で動き始めたところから広がっています。同じ悩みを持つ同業の社長と話すことで、自社の進め方を見直すきっかけにもなります。

まとめ

工務店のAI活用は、営業の付帯業務、設計の見せ方、積算の数量拾い、工務のデータ横断、社内の仕組みづくりと、業務ごとに入り口が違います。共通しているのは、会社の中にある記録をAIに読ませ、任せる部分と人が判断する部分を切り分けていること、そして最初の一歩を社長自身が踏み出していることでした。

建築AI経営研究会では、毎回テーマを変えて工務店の社長が自社の取り組みを話し、参加者がその場で手を動かして試しています。

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この記事を書いた人

建築AI経営研究会の編集部です。静岡県浜松市の工務店・株式会社LIFEFUND(注文住宅「ARRCH」「PG HOUSE」)が運営し、自社でAIを経営に入れてきた実務をもとに、工務店・建築会社の経営者向けの記事を書いています。

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