積算ソフトとChatGPT・Claudeの使い分け|工務店の見積業務で役割を分ける

お役立ちコラム:積算ソフトとChatGPT・Claudeの使い分け|工務店の見積業務で役割を分ける

この記事の結論

  • 積算ソフトと汎用AIは、どちらか一方を選ぶものではなく、得意なことが違う。
  • 決まった計算と記録は専用ツールに残し、ツールの「中」と「間」に汎用AIを足す。
  • 図面の数量は拾い方の過程まで人が確かめ、単価や最終金額は人が決める。
目次

01「積算ソフトがあるのに、AIは要るのか」

積算や見積には、すでに専用のソフトや工事管理のツールを入れている工務店も多いはずです。そこへAIの話が出てくると、「今のツールをやめてAIに乗り換えるのか」「両方に費用を払うのか」と迷うのは自然なことです。

結論から言えば、どちらか一方を選ぶ話ではありません。専用のツールと、ChatGPTやClaudeのような汎用AI(文章・表・画像など何でも扱える対話型のAI)は、得意なことがまったく違います。この記事では、特定の製品の良し悪しではなく、役割の分け方に絞ってお伝えします。

なお、過去の見積書を表にして目安の単価をつくる方法は、別の記事「見積・積算にAIを入れるなら、過去の見積書から」で紹介しています。ここでは、今あるツールとAIをどう組み合わせるかを扱います。

02専用ツールと汎用AIは、何が違うのか

専用ツール(積算ソフト・工事管理ツール)汎用AI(ChatGPT・Claudeなど)
得意なこと1決まった計算を、毎回同じように正確に行う図面や文章など、形の決まっていない情報を読み取る
得意なこと2案件ごとの記録を、決まった形で残す二つの資料を比べて、違いや抜けを見つける
得意なこと3帳票や発注書を、決まった書式で出すばらばらの情報を集めて、下書きや一覧にまとめる
ひと言でいうと決まったことを正確に繰り返す道具決まっていないものを読んで整える道具
見積業務での使いどころ決まった計算と記録ツールの中のデータの読み解きと、ツールの間の「読んで、写す」作業

専用ツールは「決まったことを正確に繰り返す」道具、汎用AIは「決まっていないものを読んで整える」道具です。見積業務には、その両方が混ざっています。

ポイント

汎用AIを足す場所は、主に二つあります。専用ツールの「中」にたまったデータを読み解く場所と、ツールとツールの「間」で人が手作業をしている場所です。

03ツールの「中」のデータに、AIをどう使うか

専用ツールを長く使っている会社ほど、その中には大量のデータがたまっています。ところが、日々の業務では案件を一つずつ見るだけで、全体を横断して見ることはあまりありません。

案件単位では見えない傾向も、全社のデータを並べると見えてきます(研究会での事例は、コラム「工務店のAI活用事例まとめ」で紹介しています)。

ツールの中のデータを書き出して、汎用AIに集計や傾向の読み取りをさせる。これは今のツールをやめずにできる、最初の組み合わせです。

04ツールの「間」の手作業は、AIに任せられるか

もう一つの場所は、ツールとツールの間です。見積業務では、こんな手作業がよく残っています。

  • 打ち合わせのメモを見ながら、仕様を積算ソフトに入力する
  • 図面を見ながら、数量を拾って表に写す
  • 業者から届いた見積を、自社の書式に転記する

こうした「読んで、写す」作業は、汎用AIが入りやすい部分です。研究会のワークショップでは、参加者がClaudeに平面図と立面図から窓の寸法を読み取らせ、単価表と照らして見積額を出す課題に取り組みました。登壇した社長の会社でも、図面からの数量拾いと見積の自動作成に取り組んでいます。運営するLIFEFUNDからは、打ち合わせの録音から数量の拾い出し、原価の集約、見積、発注予算まで、各工程にAIをつなぐ考え方を紹介しました。

注意

平面図をAIに読み取らせる検証では、ChatGPTとClaudeのどちらでも読み誤りがあり、答えの数字だけが偶然合ったことがありました。数量はAIの答えをそのまま使わず、拾い方の過程まで人が確かめてください。

05組み合わせる前に確かめたいこと

データを書き出せるか。 汎用AIに読ませるには、ツールの中のデータを表の形などで取り出せる必要があります。書き出しの機能があるか、どの項目まで出せるかを先に確かめます。外とつながらないソフトを使っている支援先では、定期的にデータを書き出して共有のフォルダに置く形で進めています。

書き出したものを置く場所があるか。 書き出したデータや図面、業者の見積が、社員のパソコンやメールに散らばっていると、AIに読ませるたびに集め直すことになります。

どこまでをAIに任せるか。 LIFEFUNDの積算のセミナーでも、見積業務を工程に分け、AIに任せる部分と人の判断が要る部分を切り分ける構成で説明しています。単価や利益の考え方、お客様に出す最終の金額は、人が決める部分です。

06ツールの提供会社に確かめておきたいこと

今使っている積算ソフトや工事管理ツールの提供会社には、次の点を一度確かめておくと、汎用AIとの組み合わせを考えやすくなります。

  • どのデータを、どんな形式で書き出せるか(表計算で開ける形か)
  • 書き出しは手作業か、決まった間隔で自動にできるか
  • 図面や添付ファイルも、まとめて取り出せるか
  • 契約を見直すとき、過去のデータを持ち出せるか

最後の点は、AIに関係なく大事です。業務ソフトは乗り換えにくい分、データを取り出せない契約になっていると、会社の記録がツールの中に閉じ込められてしまいます。

07よくある質問

Q書き出したデータをAIに渡すときの注意点はありますか?

A見積や原価のデータは、会社にとって大事な情報です。会社で契約したAIのアカウントを使い、書き出したデータは見られる人を限った共有のフォルダに置いてください。社員が個人のアカウントで扱う形は避けます。

Q今の積算ソフトは、やめたほうがよいですか?

Aやめる前提で考える必要はありません。業務ソフトは乗り換えの手間が大きく、社員も使い慣れています。決まった計算と記録は今のツールに任せ続け、その中のデータや、ツールの間の手作業に汎用AIを足すほうが現実的です。

Q積算ソフトに無い機能を、AIで補えますか?

A全社の案件を横断して傾向を見る、図面と見積を突き合わせて抜けを探す、といった「読み解き」や「突き合わせ」は、汎用AIで補いやすい部分です。一方で、毎回同じ計算を正確に繰り返す部分は、専用ツールのほうが向いています。

Q研究会では、積算も扱っていますか?

A参加者のアンケートで「積算も扱ってほしい」という声が寄せられており、ワークショップでも図面から寸法を読み取って見積額を出す課題に取り組んできました。

Q汎用AIだけで、積算まで完結できますか?

A現時点では、おすすめしません。図面の読み取りは誤ることがあり、毎回同じ計算を正確に繰り返すのは専用ツールのほうが得意です。汎用AIは、拾い出しの下書きや、ツールの中のデータの読み解き、資料同士の突き合わせといった補助から使い始めてください。

Q誰が担当すればよいですか?

A見積業務の流れを分かっている社員が、AIに詳しい社員と組んで進めるのが近道です。どの工程で手間がかかっているかは、実際に見積を作っている人がいちばんよく知っています。

まとめ

積算・見積へのAIの入れ方は、専用ツールか汎用AIかの二択ではありません。決まった計算と記録は今のツールに残し、ツールの中にたまったデータの読み解きと、ツールの間の「読んで、写す」作業に汎用AIを足す。単価や最終金額の判断は人に残す。この分け方で考えると、今のツールを活かしたまま、見積業務の手間を減らす場所が見えてきます。自社のどの工程から手を付けるかを一緒に整理したい場合は、業務別のAI実装のご相談をご利用ください。

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この記事を書いた人

建築AI経営研究会の編集部です。静岡県浜松市の工務店・株式会社LIFEFUND(注文住宅「ARRCH」「PG HOUSE」)が運営し、自社でAIを経営に入れてきた実務をもとに、工務店・建築会社の経営者向けの記事を書いています。

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