この記事の結論
- AIエージェントとは、指示を受けて自分で手順を考え、作業を進めるAIのこと。
- 成果を左右するのは道具の性能だけでなく、会社固有の情報(コンテキスト)を渡せるか。
- 任せる仕事は工程に分けて選び、作業する場所と道具を渡す相手を限って始める。
01AIエージェントとは何か
ChatGPTやClaudeに質問して答えをもらう。多くの社長のAIの使い方は、ここから始まります。最近は、それより一歩進んだ「AIエージェント」という言葉を聞くようになりました。
AIエージェントとは、指示を受けると、自分で手順を考え、ファイルを読んだり書いたり、ほかの道具を動かしたりしながら作業を進めるAIのことです。Claude Codeは、その代表的な道具の一つです。研究会でもワークショップでAIエージェントを体験した回があり、AIエージェントを経営に組み込むことをテーマにした回では、参加者から、AIが仕事を自分で進めることへの驚きの声が上がりました。
では、工務店の経営にどう組み込めばよいのか。この記事では、研究会の講演で示された考え方をもとに、任せる仕事の選び方と注意点を整理します。社長の判断の記録をためる使い方は、別の記事「社長の判断をAIで速くする『判断基準』の書き出し方」で扱っています。
AIエージェントの成果は、道具の性能だけでなく、会社の情報をどれだけ渡せるかで決まります。
02AIエージェントは、AI活用のどの段階で使うものか
第4回の研究会の主催者講演では、AI活用の成熟度を、次のような段階で整理しました。
- 個人がAIを使う
- 部署・全社で使い方をそろえる
- 自社のデータをAIが読める形にまとめる
- AIエージェントと仕事を分担する
いきなり4段目を目指しても、うまくいきません。AIエージェントが会社の仕事を任されるには、会社の情報が読める場所にそろっていることが前提だからです。
講演で鍵として挙げられたのが「コンテキスト」です。失敗と成功の理由、現場の判断のコツ、協力業者との関係、暗黙のルールなど、人は知っているがAIはまだ知らない会社固有の情報のことです。これを渡して初めて、AIは実務で使えるようになります。
03AIエージェントに任せる仕事は、どう選べばよいか
AIエージェントに「この業務を全部やって」と頼んでも、うまくいきません。講演で紹介された事例では、工務の仕事を工程の順に細かく分け、AIに任せる仕事と、人が判断する仕事を切り分けていました。
たとえば工務の仕事なら、次のように分けて考えられます。
| 分け方 | 工務の仕事の例 |
|---|---|
| AIに任せやすい | 決まった書式の書類を作る、記録をまとめる、抜けを確かめる |
| 人が判断する | 協力業者との調整、お客様への説明、工程の変更の判断 |
参加者の声で印象的だったのは、「AIを使いこなす人材とは、ツールに詳しい人ではなく、業務を分解できる人だ」という気づきです。AIエージェントを入れる前に、社長や管理者が自社の仕事を工程に分けて書き出せるかどうかが、最初の分かれ目になります。
04仕事の「振り分け」をAIに任せる
工程に分けた仕事が増えてくると、次はそれをどう回すかです。
第4回の研究会では、チャットツールで届いた依頼を起点に、まとめ役のAIが、見積・工程・お客様対応などを担当するAIへ仕事を振り分ける仕組みを実演しました。人が「これは誰に頼むか」を毎回考えなくても、依頼の中身に応じて担当のAIに渡っていく形です。
運営するLIFEFUNDの社内でも、案件を渡すと、まとめ役のAIがその案件に必要な役割のAIを集めて作業を進め、作業のたびに記録と資料がフォルダに残っていく仕組みを試しています。その際、会社全体で使う情報と、個人の情報を置く場所を分ける設計にしています。何でも一か所に混ぜると、見せたくない情報までAIが読んでしまうからです。
設計の分野でも、第6回の研究会では、AIがCADを操作して図面を描く段階に入りつつあることがデモで示されました。
05始めるときの注意点
作る前に、ためる。 LIFEFUND自身も、AIで社内向けのアプリを作り込むより、議事録などの記録をためることを優先する方針に切り替えたことがあります。AIエージェントに渡す材料がたまっていなければ、どれだけ仕組みを作っても動きが一般論になります。
作業する場所を限る。 AIエージェントの多くは、作業のたびに許可を求める設定と、確認なしで進める設定を選べます。確認なしにすると速く進みますが、不要と判断したデータを消してしまうこともあります。最初は、作業する場所を専用のフォルダに限り、実行の前に手順を見せてくれる設定から始めるのが安全です。
全員に一度に配らない。 何でもできるぶん、データを丸ごと書き換えてしまうことも簡単です。LIFEFUNDでは、対話型のAIは全員に配り、社内の事例共有会で使い方を確かめた社員から順に、AIエージェントの道具を渡しています。
AIエージェントにメールや共有ドライブをつなぐときは、読ませる範囲を自社のフォルダに限り、送信や削除はさせない設定にしてください。メールや資料の中に書かれた「指示らしき文章」を、そのまま実行させないことも大切です。
- 自社のAI活用が、四つの段階のどこにいるか分かっているか
- 任せたい業務を、工程に分けて書き出せるか
- 会社全体の情報と、個人の情報の置き場所を分けているか
- AIエージェントに作業させる場所を、専用のフォルダに限っているか
- AIエージェントの道具を渡す社員の順番を決めているか
06よくある質問
Qプログラミングの知識がないと使えませんか?
AAIエージェントへの指示は、日本語の文章で出せます。最初の設定でつまずくことはありますが、そこを越えれば、やりたいことを言葉で説明できるかどうかが大事になります。だからこそ、業務を工程に分けて言葉にできる人が力を発揮します。
Qどの業務から任せるのがよいですか?
A毎回同じ手順で進み、結果を人がすぐ確かめられる業務からがおすすめです。たとえば、決まった書式の書類づくりや、記録の整理です。お客様や協力業者とのやり取りのように、相手の事情を読んで判断する仕事は、人の手に残しておきます。
Q社長が自分で使う必要はありますか?
A社長自身が一度は触っておくことをおすすめします。何が任せられて何が任せられないかを知らないまま社員に任せると、任せる仕事の線引きができないからです。
QAIエージェントが間違えたら、誰の責任になりますか?
A研究会で登壇した社長も、最後に判断して責任を取るのは人だと強調していました。AIエージェントに任せるのは作業までで、お客様や協力業者に出すもの、お金に関わるものは、人が確かめてから外に出す。この線を最初に決めておくことが、安心して任せる範囲を広げる前提になります。
Q外部の支援なしで始められますか?
A一つの業務を工程に分け、作業する場所を限って試すところまでは、自社でも始められます。複数の業務をつないだり、会社の情報の置き場所から整え直したりする段階で、外の力を借りるかどうかを考えれば十分です。
まとめ
AIエージェントは、工程に分けた仕事を担当し、仕事の振り分けまで引き受ける相棒になり得ます。ただし、その力を引き出すのは、会社固有の情報である「コンテキスト」と、業務を工程に分けて書き出す人の力です。記録をため、任せる仕事を工程で選び、作業の場所と配る相手を限りながら広げていく。何から始めるか迷う段階なら、AI顧問で社長の相談相手として一緒に整理できます。
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建築AI経営研究会について
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