この記事の結論
- 最初に任せるのは、毎週発生し、失敗しても取り返しがつき、出来をすぐ判断できる業務。
- 迷ったら、お客様へのメールの下書きか、打ち合わせの議事録から始める。
- お客様の情報を入れる段階では会社のアカウントで使い、最終確認は人が行う。
01ChatGPT・Claudeを契約したら、まず何に使えばよいか
ChatGPTやClaudeを契約してみたものの、たまに調べものをするくらいで終わっている。工務店の社長から、よく聞く話です。
AIは何でもできるぶん、最初の使い道を決めないと手が止まります。そこで、建築AI経営研究会の参加者が事前のアンケートで「効率化したい」と挙げた業務を中心に、最初に試しやすい業務を10個選びました。
選んだ基準は三つです。毎週のように発生すること、失敗しても取り返しがつくこと、出来の良し悪しを社長や担当者がすぐ判断できることです。
10個を一覧にすると、次のとおりです。
| 分野 | 業務 | AIに渡すもの |
|---|---|---|
| 文章づくり | 1. お客様へのメール・返信の下書き | 伝えたい要点の箇条書き |
| 文章づくり | 2. 提案書の下書き | お客様のご要望やアンケートの内容 |
| 文章づくり | 3. SNS投稿の文章 | 完成写真と現場のひと言 |
| 文章づくり | 4. 社内マニュアル・手順書 | 手順を口で説明した録音を文字にしたもの |
| 記録と報告 | 5. 打ち合わせの議事録 | 打ち合わせの録音を文字にしたもの |
| 記録と報告 | 6. 現地調査の報告書 | 現地のメモや写真の説明 |
| 記録と報告 | 7. 完工報告・お引き渡しの書類 | 見本にする過去の報告書 |
| 数字とチェック | 8. 業者見積の確認 | 届いた業者見積と、過去の見積書を表にしたもの |
| 数字とチェック | 9. 図面の面積・数量のチェック | 図面などの資料 |
| 数字とチェック | 10. 社員が作った書類の事前チェック | 社員が作った書類と、社長が気にしている点を書き出したもの |
02文章づくりの業務
1. お客様へのメール・返信の下書き
いちばん始めやすいのが、お客様への連絡文です。伝えたい要点を箇条書きで渡し、「丁寧に、短く」と頼めば下書きが出てきます。研究会とは別の場で、工務店の営業を支援する講師が紹介した例でも、メールの文書作成を社内で回している工務店がありました。
2. 提案書の下書き
お客様のご要望やアンケートの内容を渡して、構成と文章の下書きを作らせます。仕上げと最終判断は担当者が行います。
3. SNS投稿の文章
アンケートでも、SNSや広告まわりを効率化したいという声は多く寄せられました。完成写真と現場のひと言を渡して投稿文の案を複数出させれば、選んで直すだけで済みます。
4. 社内マニュアル・手順書
手順を口で説明したものを録音して文字にし、AIに整えさせると、マニュアルの下書きになります。パソコンが得意でない現場のリーダーには「使いこなせ」ではなく「録音ボタンを押すだけでいい」と伝える、という進め方を支援の打ち合わせでお伝えしたことがあります。
03記録と報告の業務
5. 打ち合わせの議事録
録音を文字にし、決まったこと・宿題・次回の予定に分けてまとめさせます。会社の中に記録がたまり始めるので、後の使い道が広がる業務です。
6. 現地調査の報告書
現地のメモや写真の説明を渡し、決まった書式の報告書にまとめさせます。アンケートでも、現地調査報告を効率化したいという声がありました。
7. 完工報告・お引き渡しの書類
型が決まっている書類はAIに向いています。過去の報告書を一つ見本として渡すと、自社の書き方に寄せやすくなります。
04数字とチェックの業務
8. 業者見積の確認
業者から届いた見積が過去と比べて大きく外れていないか、確認の補助をさせる使い方です。過去の見積書を表にしてためておくと、比べる材料になります。
9. 図面の面積・数量のチェック
アンケートでは、見積と並んで図面の面積を効率化したいという声が多くありました。研究会に参加した社長の中には、日ごろから資料をAIに読ませていたところ、建築家のラフプランの面積の誤りにAIが気づいた、という方もいます。
10. 社員が作った書類の事前チェック
見積・提案書・お客様への返信を、社長が気にしている点を書き出したうえでAIに先に見させる使い方です。社長がすべてを一から見直す手間を減らす入り口になります。
数字や面積は、AIの答えをそのまま使わず、人が元の資料と突き合わせてください。AIは計算や読み取りを誤ることがあります。
05最初の一週間は、どう試せばよいか
10個の中から一つ選んだら、一週間ほどかけて次の順で試してみてください。
業務を一つ選び、見本を用意する。 いちばん手間がかかっている業務を一つだけ選び、その業務で「良くできた」と思う過去の書類を一つ用意します。
実際の仕事で下書きさせ、直した所を書き留める。 練習用の題材ではなく、今週の実際の仕事で使います。そのまま使えなかった所、自分で直した所をメモしておきます。
直した所を、次の指示に書き足す。 「敬語はもう少しくだけて」「金額は書かない」「最後に次の打ち合わせ日を入れる」など、直した内容を指示に足していきます。直した所は、これまで言葉にしていなかった自社のやり方そのものです。
うまくいった指示を保存し、社員と共有する。 担当者が替わっても、同じ水準の下書きが出せるようになります。
06使う前に決めておきたいこと
まず、会社のアカウントで使うことです。研究会でも、会社が標準のAIを用意しないと、社員が個人の無料アカウントに業務の情報を入れてしまう危険があると指摘されてきました。自分で使い心地を試すだけなら無料版でも構いませんが、お客様の情報や社内の資料を入れる段階では、会社の契約に切り替えてください。
次に、お客様に出す前に誰が確認するかです。AIは下書きと確認の補助が得意ですが、お客様に出す書類の最終判断は担当者と社長が行います。
迷ったら、1のお客様へのメールか、5の議事録から始めるのがおすすめです。どちらも毎日のように発生し、出来をその場で判断できます。議事録は続けるほど記録がたまり、見積の確認や引き継ぎなど、ほかの業務にAIを使うときの材料にもなります。
07思った下書きが出ないときは、どこを見直すか
試してみて「思ったような下書きが出ない」と感じたら、AIの性能を疑う前に、次の三つを見直してみてください。
指示が短すぎないか。 「提案書を作って」だけでは、AIは一般的な提案書しか作れません。誰に向けた書類か、何を伝えたいか、どのくらいの分量か、といった条件を足すだけで、出てくるものが変わります。
見本を渡しているか。 自社の過去の書類を一つ見せるのは、いちばん効く工夫です。言葉で説明しにくい「自社らしさ」が、見本から伝わります。
材料が足りているか。 お客様のご要望や、打ち合わせで決まったことを渡さずに書かせると、AIはもっともらしい内容で空白を埋めてしまいます。書いてほしい中身の材料は、人の側で渡します。
それでも合わない業務は、無理に続けなくて構いません。10個のうち別の業務に切り替え、AIに向いている仕事と向いていない仕事を見分けていくことも、最初の大事な一歩です。
08よくある質問
QChatGPTとClaude、どちらで始めればよいですか?
Aここで挙げた10個の業務は、どちらでも試せます。会社の情報をGoogle WorkspaceとMicrosoft 365のどちらに置いているか、社員がすでにどちらに慣れているかで選ぶと決めやすくなります。
- 10個のうち、自社で毎週発生している業務はどれか
- その業務の見本になる過去の書類は手元にあるか
- AIは会社のアカウントで使える状態か
- お客様に出す前に、誰が最終確認するか決めているか
QAIの答えが間違っていたら、どうすればよいですか?
A間違いを直したうえで、なぜ間違えたのかを考えてみてください。材料が足りなかったのか、条件を伝えていなかったのか。原因が分かれば、次の指示に足せます。お客様に出すものは、どの業務でも人が最後に確かめる前提で使います。
まとめ
ChatGPTやClaudeは、文章づくり、記録と報告、数字とチェックの三つの分野で、工務店の日々の業務にすぐ使えます。毎週発生し、失敗しても取り返しがつき、出来をすぐ判断できる業務を一つ選び、一週間、実際の仕事で試してみてください。どの業務から始めるか迷う場合は、AI活用診断でいまの状況を整理するところから始められます。
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